雉虎白note

ポップカルチャーぐうたら

2019年邦楽日本語ベストトラック30曲 & ベストアルバム5枚

f:id:shirokijitora:20201216022119j:plain

2019年の年間日本語ベストトラックと、日本語ベストアルバムを選んだ。邦楽ではなく、日本語という括りで選出。曲はすべてポップミュージックとして聴いていたもの。歌詞に心を奪われたり、新しいボーカル表現に出会ったり、今年も面白い日本語の音楽がたくさんあった。以下、日本語ベストソング30曲と、日本語アルバム5枚です。

 

The 30 Best Japanese Tracks of 2019

30. Fuji Taito - Bakdan

f:id:shirokijitora:20191229220411j:plain
日本語トラップのニューアーティストを聴いても新鮮味を感じることが少なくなっている。それでもFuji Taitoは別格。比較的はっきりした発音なのにスムーズなラップで、個性もあって魅力的。
<< YouTube >>

29. Official髭男dism - Pretender

f:id:shirokijitora:20191229170907j:plain
マイノリティにまで目配せし、広い射程をもったこの曲が今年のNo1ヒットになったのは当然かもしれない。単なるラブソングではなく、希望を持ちようのない世界に生まれてしまったことを呪う歌。今の日本で「違う世界線を選べたらよかった」と感じる人に響いているのだと思う。
<< YouTube >> << Spotify >>

28. MonyHorse - Oinukasu

f:id:shirokijitora:20191229170932j:plain
この物騒な曲に対して言うのもおかしいが、モニーはいつも言葉選びが丁寧で誠実だ。従来の日本語ラップ的なフロウの固さを上手に活かすスキルが存分に発揮され、トラックとラップの駆け引きが面白い曲になっている。
<< YouTube >> << Spotify >>

27. 君島大空 - 遠視のコントラルト

f:id:shirokijitora:20191229171104j:plain
退廃的な雰囲気の曲だけど、希望がキラリと光るようなポジティブなヴァイブスを感じる。そして演奏が緻密なうえ録音も綺麗で、デビュー作とは思えない貫禄がある。独特なボーカルも相まって不思議な中毒性のある曲。
<< YouTube >> << Spotify >>

26. AKLO & NORIKIYO - 百千万

f:id:shirokijitora:20191229171124j:plain
AKLOは、最新のラップをどう日本語に置き換えるのか研究し続けている人だと思う。もちろん多くのラッパーが同じことに向き合っているけど、その結果がキャッチーさを伴うことは稀。AKLOはコンスタントにそういった良曲を生み出していて、いつも驚かされる。
<< YouTube >> << Spotify >>

25. RAU DEF - AFTER PARTY feat. Jinmenusagi

f:id:shirokijitora:20191229171035j:plain
RAU DEFもジメサギも超絶スキルのラップ。日本語のラップ表現は本当に難しいと思うのだけど、2人とも聞いたことない領域に連れていってくれるので信頼しているラッパー。後半のジメサギ凄いことになってます。
<< YouTube >> << Spotify >>

24. Vaundy - 東京フラッシュ

f:id:shirokijitora:20191229171159j:plain
少し前のシティーポップブームの楽曲群と一線を画しているのは、圧倒的なボーカルの巧さだと思う。単調なトラックを歌でコントロールするのは、日本語だと特に難しいはずだが、実にさりげなく乗りこなしている。
<< YouTube >> << Spotify >>

23. Minchanbaby - Blue Clouds

f:id:shirokijitora:20191229171141j:plain
Minchanbabyが押し広げる日本語ラップの可能性にゾクゾクしてしまう。「アリだけどナシ ナシだけどアリ それヤバいやつ アリアリアリアリ」全部日本語なのにそう聞こえない強烈なトラック。中毒になる。
<< YouTube >> << Spotify >>

22. THE NOVEMBERS - Everything

f:id:shirokijitora:20191229171524j:plain
ひたすら反復する3連のハットとキック・スネア、Tame Impalaのようなアクセントとなるベース、そしてその上の鮮やかなサイケデリアに惹き付けられた。平凡な日常とは違う世界へ連れていってくれる優雅さを持ってる。
<< YouTube >>

21. AAAMYYY - GAIA

f:id:shirokijitora:20191229173119j:plain
ウネウネしたシンセのレイヤーが不穏に重なった不思議なトラックだが、ソングライティングとボーカルが見事にポップソングへと引き上げている。この曲の他にもアルバム全体に高いクオリティのポップスが収録されており、凄い才能だと感じた。
<< Spotify >>

20. suchmos - WATER

f:id:shirokijitora:20191229171218j:plain
予兆はあったものの、ここまで大きく舵をきってくるとは。4年前の「Stay Tune」をきっかけに、大量のおしゃれシティーポップが出現したが、今のsuchmosはそこから遠いところにいる。時代と逆行するようなサイケデリック・ロックサウンドを長尺でたっぷりと聞かせてくれる。
<< Spotify >>

19. Mall Boyz (Tohji & gummyboy) - Cool running feat. SEEDA

f:id:shirokijitora:20191229173417j:plain
マライアキャリーをサンプリングしたトラックの上を、3人がとにかく気持ちよく跳ねている。Tohjiはもちろんだが、SEEDAのようなベテランがポップなトラップチューンをフレッシュに乗りこなしているのも最高。
<< YouTube >> << Spotify >>

18. KOHH - I Think I'm Falling

f:id:shirokijitora:20191229171238j:plain
あのハードなアルバムの後に、こういう曲が聞けると思っていなかったので驚いた。KOHHによるポップなサマーソング。シンプルな曲だが、ありきたりな日本語ラップに聞こえないのはさすが。やはり段違いにラップが巧いことに気付かされる。
<< YouTube >> << Spotify >>

17. never young beach - 春を待って

f:id:shirokijitora:20191229172251j:plain
2019年の作品とは思えないドライなサウンドと、心地良いグルーヴをぶった切る細野晴臣風のアレンジが面白い曲。スポティファイのディナー向けのプレイリストからこの曲が流れてきた時は驚いた。こんな変わった曲が世界中の晩餐で流れているなんて最高じゃないか。
<< Spotify >>

16. UMI - Sukidakara

f:id:shirokijitora:20191229173353j:plain
UMIのことはアメリカのベッドルームR&Bの人として認識していたので、日本語が聞こえてきた時はビックリした。ねっとりした日本語の発声だけど、曲の推進力として歌が楽器的に機能していてとても不思議。今までなかった「新しい素朴さ」がこの曲では発明されていると思う。
<< YouTube >> << Spotify >>

15. SPARTA - ALIEN feat. KID FRESINO

f:id:shirokijitora:20191229173005j:plain
正直なリリックと声に心を掴まれた。こういう曲があるから日本語の曲を探し続けてしまう。シンプルなアレンジだが、2人の誠実な歌詞が際立ち、ラップが冴えまくっている。フレシノのこういうモードの曲は久しぶりに聞いたので嬉しかった。
<< YouTube >>

14. RIRI, KEIJU, 小袋成彬 - Summertime

f:id:shirokijitora:20191230141051j:plain
RIRIは素晴らしいヴォーカリストだが、サウンドが平凡なR&Bで少しもったいないと感じていた。しかしこの曲は小袋成彬のプロデュースによってUSメインストリームとは異なるサウンドに仕上がっている。今までの日本のシーンには無かったタイプの曲。
<< Spotify >>

 13. People In The Box - 装置

f:id:shirokijitora:20191229173057j:plain
小刻みのスネアと呪文のように韻が踏まれたコーラスに病み付きになった。海外のインディーロックのようにドラムがビートを刻まない構造で、キャッチーさも兼ね備えた日本語の曲というのは、他に思い浮かばない。
<< Spotify >>

12. 小袋成彬 - Night Out

f:id:shirokijitora:20191229173027j:plain
アルバムのオープニングで静かにスタートする曲で、畳み掛けるようにサウンドが重なっていく。ビートの後に強いエフェクトの掛かったギターが絡んでくるあたりから、海外の最先端のサウンドと展開を丁寧に引用していることに気づくはず。これまで日本の音楽にはなかった立体的な楽曲構造が実現している。
<< Spotify >>

11. Kan Sano - My Girl

f:id:shirokijitora:20191229173136j:plain
KAYTRANADAのような踊れるヒップホップ・トラック。精密な演奏が心地良く、音がドライからウェットにダイナミックに移行するトリップ感もある。ベッドルームでも外出中でも、この曲を聴けば最高な気分にさせてくれる。
<< YouTube >> << Spotify >>

10. Mall Boyz (Tohji & gummyboy) - Higher

f:id:shirokijitora:20191229173417j:plain
正直に言うと最初はあまりピンとこなくて、Tohjiが特別なのに気付くまで時間がかかった。「誰も見たいことのない景色だけを見る」本当にそういう感じで生きている姿が見えてくると、曲の聞こえ方が変わった。きっと彼なら何かやってくれると、そんな気持ちにさせてくれる。
<< YouTube >> << Spotify >>

9. 思い出野郎Aチーム - 同じ夜を鳴らす

f:id:shirokijitora:20191229173251j:plain
人々の生活をさりげなく祝福するような曲を作らせたら、右に出る者はいないんじゃなだろうか。しかもシンプルでキャッチーな踊れるポップソングにしてくれる。良い時も悪い時も寄り添ってくれるような大切な曲。
<< YouTube >> << Spotify >>

8. サカナクション - 忘れられないの

f:id:shirokijitora:20191229171258j:plain
失礼ながら、ダンスミュージックに傾倒しているのにバタバタして踊れないバンド、というのが以前のサカナクションの印象だった。しかし今回のアルバムではついにグルーヴを手に入れ、サウンドプロダクションも見違えるほど良くなっている。本来持っていたソングライティングとボーカルの良さが水を得た魚のように活き活きしはじめ、素晴らしいポップソングが誕生した。
<< YouTube >> << Spotify >>

7. KIRINJI - 「あの娘は誰?」とか言わせたい

f:id:shirokijitora:20191229173321j:plain
ラップからの影響を落としこんだボーカルと、前作まではなかった本格的なグルーヴが絡み合った一曲。細かいところまで引きのあるフレーズで構成されているのにベテランの凄みを感じる。歌詞もサウンドプロダクションも見事。
<< Spotify >>

6. 小袋成彬 - New Kids feat. Kenn Igbi

f:id:shirokijitora:20191229173027j:plain
「待って なんか今日空が青くね?」身近なことをゼロ距離から放ってくる小袋節にあっけにとられていると、話は家族のことに移り、「空の向こうでまた誰かが産まれてる」セカイの話にあっという間に変わっている。その視点の変化に合わせてトラックのスケール感もダイナミックに変化して、いつのまにか曲の中に自分も取り込まれていることに気付かされる。
<< Spotify >>

5. KOHH - Imma Do It

f:id:shirokijitora:20191229173450j:plain
KOHHのラップにはいつも感動してしまう。楽器的な精密さを持った多彩なデリバリーで紡がれる言葉は、溜息が漏れるほどダイレクトに響いてくる。「俺は生きるカート・コベインyeh yeh、カート・コベイン HOO!!」完璧。かっこよすぎる。
<< Spotify >>

4. Kan Sano - Stars In Your Eyes

f:id:shirokijitora:20191229173136j:plain
Anderson .PaakのようなモダンR&Bサウンドを正確に引用し、緻密なビートを作り出す職人技。違和感なく日本語が乗っているのが奇跡のよう。この曲には日常をさりげなく祝福してくれるような愛おしさがある。
<< YouTube >> << Spotify >>

3. CHAI - ファッショニスタ

f:id:shirokijitora:20191229173527j:plain
パンクとJ-Popを横断する楽曲に「強力なグルーヴ」が加わったことで、唯一無二の音楽性を獲得したダンスチューン。コンセプトが前傾化していて誤解されやすいバンドだったと思うが、今作への絶賛は純粋に音楽に対してのものだと感じている。
<< Spotify >>

2. 坂本慎太郎 - 小舟 feat. ゑでゐ鼓雨磨

f:id:shirokijitora:20191229173545j:plain
風刺の効いた歌詞の切れ味に恐ろしさすら感じた。今の日本の空気感、日常を覆っている不穏な気配が曲に凝縮されている。「逃げ遅れたってことか」諦めのような言葉に戦慄するが、奇妙なほどおだやかで心地良さすら感じる。
<< YouTube >> << Spotify >>

1. 小袋成彬 - Gaia feat. 5lack

f:id:shirokijitora:20191229173027j:plain
「怒らないで運命のオーナー 失敗と成功で鮮やかだぜ兄弟 苦悩も幸福も運命の子孫 善悪のシーソーで困惑しそう 」神の悪戯を祝福し、運命を慈しむような5lackの包容力に心を奪われた。人が再起する瞬間を瑞々しく捉えきった奇跡のような曲。
<< YouTube >> << Spotify >>

 

The 5 Best Japanese Albums of 2019

f:id:shirokijitora:20200102192744j:plain
1. 小袋成彬 - Piercing ♪♪
2. CHAI - PUNK ♪♪
3. KOHH - Untitled ♪♪
4. KIRINJI - Cherish ♪♪
5. Kan Sano - Ghost Notes ♪♪

小袋成彬『Piercing』は2010年代の最後にふさわしいアルバムだったと思う。ガラパゴス化して久しい日本のポップミュージックシーンにおいて、ここまで進化している作品は他に見当たらない。ソングライティングもサウンドプロダクションもすべて次世代のレベルに到達している。前作のストレートなフランクオーシャン・オマージュは影を潜め、Jポップ的な過剰に説明的な展開も減衰し、完璧なバランスが取れていると思う。これを2010年代に置いていき、新たなディケイドに何を作るつもりなのか、楽しみでしかたがない。

 

2019 in Japanese Music

選んだ曲はすべてポップミュージックとして聴いていたもの。どれもキャッチーで耳に残るラインがあったと思う。サウンド面やグルーヴがきちんとしていることを重視しているけれど、それがダメでも歌詞とメロディの力で押し切られてしまうのが母国語で歌われる曲のおもしろいところ。白状すると、いくつかそういう曲が混ざっている。

新しい日本語での表現という点では、やはりラップの進化が見所だが、ここ数年停滞気味なのが気になるところ。Jポップの中にラップ以降のフロウが見られるのも当たり前になっているが、その多くが劇的な変化や面白い表現に至っていないのも残念に思う。その点、ベテランのキリンジが「あの娘は誰?とか言わせたい」のようなボーカル表現に到達したのはとても興味深い事だった。

メインストリームではOfficial髭男dismが一人勝ちしたのが印象的だった。音楽ファンからはネガティブな反応が多いバンドだが、個人的には今一番気になる存在。メガヒットした「Pretender」こそ退屈なサウンドだが、他の曲を聴いてみると世界の最新サウンドを貪欲に取り込もうとしていることに気付かされる。しかもその完成度は決して低くない。

Travis Scottのstraight upのような飛ばしのリバーブをキメたかと思ったら、急にBrasstracksを引用してみたり、ジャンルもバラバラのサウンドをこれでもかと取り込もうとしていて。それをJポップのど真ん中で挑戦しているのだからすごい事。今後どういった進化を遂げていくのか注目したい。ただ、需要に答えてコテコテのドラマ主題歌を量産しそうなのも気がかり。どうかクリエイティブでいてほしい。

2020年代には、どんな新しい表現が生まれるのかとても楽しみ。個人的にはキャッチーさも兼ね備えたバランスの曲が好きなので、2016年に世界のメインストリームで起こったようなことが、日本でも起こると良いなぁと思っている。日本の音楽を取り巻く状況は決して良くないが、変化が起こり、それが良い結果に繋がることを願っている。 

↓2019年の総合(洋楽)ベストトラック&アルバムはこちらです