雉虎白note

ポップカルチャーぐうたら

クアランティン時代の音楽を振り返る

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実は今年没にした下書きが10個くらいあるんだけど、せっかくだから年間ベストを出す前に、その一部を簡単にまとめてシェアします。もったいないから。2020年になんの作品に興味をもって、どう感じていたかの備忘録です。

J hus

今年最初に気に入ったアルバムはJ Hus(Jハス)の2ndアルバム『Big Conspiracy』だった。前作の曲「Did You See」に衝撃を受けて、どんな続編を出してくるのかと思ったら、よりアフロスウィングを前進させる方向に進化していた。

前作がUKグライムやトラップ的なサウンドが前提にあるとしたら、今作はより「アフロ」的なサウンドを推し進めた結果なのかなと思う。オーバーコンプなローが醸し出す、密室のかび臭さや煙たい雰囲気は相変わらずあるんだけど、同時に南国の爽やかさもあるから不思議なもん。

ただ今年はコロナのせいで明るいサウンドを求めてしまって、出番が少なくなってしまったのがちょっと残念だった。傑作だったので、次の進化にも期待しています。

Tame Impala


2月にリリースされたTame Impala(テーム・インパラ)の4作目『The Slow Rush』。前作の方が全然良かったじゃんという意見もあってそれもまぁ納得なんだけど、個人的にはめちゃくちゃ好きなアルバムだった。

ただ変なアルバムではあると思う。オープニングのバレアリックなハウスナンバーで始まり、クラシックロック的な大展開やAOR的なサウンドを次々と繰り出し、まとまりがないっちゃない。

ただ、Kevin Parkerのシグネチャーであるぶっ飛びサイケサウンドは1ミリもブレがなく、というか、過去最大に飛んでる。実際にライブを見た人は納得してもらえると思うけど、音楽であそこまでキメさせられる人って他にいないと思う。

今作のテーマである「時間」に関するワードが曲のタイトルやリリックにも頻出しているのが特徴で、その真意はよく分からないけど、すごくドラッグ的なものを想起させられるのね。このアルバムはそういう点で、他のどの作品とも替えが効かないものなんだと思う。

The Weeknd


3月にリリースされたThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)のアルバム『After Hours』は、時間が経つにつれて徐々に良く感じるようになったアルバムだった。

個人的にはMax Martinプロデュースの曲がどうもしっくりこなかった。たぶんそう思ったのは80s回帰のサウンドリバイバルしきれてない感じがしたから。特にマーティンのソングライティングはゴリゴリにキャッチーだから、音がよっぽど良くないと聞いててキツいのよ。

その点例えば2015年の「Can't Feel My Face」はバランスが取れてた思うけど、今作のはどうなんだろう。「Scared to Live」「Blinding Lights」なんかは振り切れてて良いと思ったけど、他のマーティン曲はどうかなぁと感じていた。

ただ不思議なもので時間が経つと気にならなくなっていて、今は別に全然良いじゃんて思うようになってる。一体何の変化があったのか自分でも不思議。

Fiona Apple


4月リリースにされたFiona Appleフィオナ・アップル)のアルバム『Fetch the Bolt Cutters』も、時間が経つに連れてどんどん良く感じるようになっていった作品。

このアルバムは音がフレッシュで、やたらパーカッシブなサウンドは、たぶん楽器じゃないものまでバシバシにぶっ叩いて録音してるとおもうんだけど、そういうアヴァンギャルドな音作りと、僕が好きな感じは距離があるので、すぐには大好きになれるものじゃなかったんだと思う。

それでも聞き続けられたのは、細部の音作りがとにかくリッチで面白かったから。それこそエレクトロニック系のエリートの人達がやっているような領域に到達している感じ。ハイからローまで、空間の鳴りも含めて本当に気持ち良い音をしていた。

そうして聞いてると、アヴァンギャルドに感じていた作品が、ポップミュージックとして消化できるように自分の中で変化していったので、本当に好きだなって思えるようになったという訳。

最初は気付かなかったけど、このアルバムの曲も今までの作品と同じで、ちゃんとエモーショナルに感情に訴えかけるソングライティングの仕掛けがしっかりあるんですよね。それがヤバいサウンドで構築されてるから、なかなかダイレクトには反応できないものなんだけど、時間をかけるとどんどん味が出てきて最高だった。

Haim

延期もあってようやく6月に出たHaim(ハイム)の3rdアルバム『Women in Music Pt. III』、聞いた瞬間すぐ名盤だと確信した。このアルバムの何がスゴいのかって突き詰めていくと、プロデューサーのRostam(ロスタム)が良いという結論になってしまう。

この作品はRostamのディテールへの異常なこだわりが随所に現れていて本当に最高。音一つのサステインの最後の最後まで、響きをコントロールしようとしてるのがよく分かる。その一つ一つが曲全体の雰囲気にしっかり関与しているから、曲が鮮やかな表情をしていて、全然飽きがこない。

Rostamはグルーヴを作るのがおそらく得意ではないんだけど、そこはHaimの3人がプレイヤーとしてしっかりグルーヴィーに仕上げているので、しっかり歯車が噛み合ったのだと思う。間違いなくハイムの最高傑作。この先も期待してる。

Taylor Swift


7月にサプライズでリリースされたTaylor Swiftの『folklore』はなかなかの衝撃だった。The National(ザ・ナショナル)のAaron Dessner(アーロン・デスナー)をプロデューサーに、ゲストにBon Iver(ボン・イヴェール)というインディーロック・スーパーエリートを迎えての意欲作。

かなり複雑なサウンドになると予想したけれど、意外に簡素で上質なアレンジだったので肩すかしを喰らった。ただテイラーのソングライティングを活かすにはこのバランスが一番良かったんだろうなという点と、そもそもあのテイラーがインディーロックに手を出すと思ってなかった(2012年のあのリリックにイラっとした身としては特に)のもあって、かなり好感触だったのを覚えてる。

ただ時間が経つにつれて退屈なアルバムだなと感じるようになってしまい、最終的にサウンド的には最もシンプルだけど、キャッチーでエモさのある「Betty」が一番好きかもというところに落ち着いてしまう。12月に出た次作『evermore』も同じ路線で、あまり興味が出なかった。

結局自分が好きなのはテイラーのポップソングライティングで、それがサウンドと一緒に突き抜けちゃってる『1989』が一番好きなんだよね、『Red』とかより。もしインディー路線で行くならBon Iverがチャレンジしているような意味分からんアレンジで聞いてみたい(戯言)。

Afrobeats

今年の後半はとにかくアフロビーツにハマっていた。以前から好みではあったんだけど、Burna Boy『Twice as Tall』(8月)、Fireboy DMLApollo』(8月)、Wizkid『Made in Lagos』(10月)、Davido『A Better Time』(11月)とヤバい作品が連続して出てしまったせいで、完全にアフロビーツバブルに突入してしまった。

これはコロナのクアランティンの影響もあって、自分の中でとにかく明るい曲を求めるようになっていたのもあるんだと思う。今年一番再生数の多かった曲はBTS「Dynamite」だったし、精神衛生上明るい曲じゃないと耐えられなくなっていたんだと思う。

ただ、自分が好きなアフロビーツは明るいだけじゃなくて、エモさもあるのが好みで。底抜けに明るい中にも哀愁がある感じ、それでいうと特にDavidoとFireboy DMLにはやられまくった。

それにサウンドが両者ともかなり未来的でめちゃくちゃクールで最高。ソングライティングがキャッチーな分、アレンジを失敗すれば第三世界の歌謡曲みたいになりかねないんだけど、とにかくサウンドが先鋭的で旬な音が鳴っているのが良かった。

すでにアフロビーツはワールドミュージック(グローバルミュージック)の範疇を超えていて、新しい”ポップ”ジャンルになったんだと確信しています。この先数年でアフロビーツはメインストリームまで広がるはず。